ぽりたんたんblog

30代フリーランスの何気ない日常とエッセイ。

会社員とフリーランスはどっちが得なの?を検討してみた

確定申告も終わったところで、前々から気になってた、


会社員と個人事業主フリーランス)って結局のところ、どっちが得なの??


というのを自分が納得できるまで徹底的に比較検討してみた。
ちなみにここでいうとは、主に同じ職業&収入で比較した場合に手取りが多いという意味だ。
なのでどちらの税金と社会保険料の方が安いかとほぼ同義である。


ただし社会保険料には税金という側面以外に、保険や年金という側面もあるので、その点は加味して考えている。


僕はフリーランスエンジニアとして働いているので、若干その経験に偏った部分もあるが、他の個人事業主や独立に興味のある会社員にも参考になるところがあるはずだ。

 

※記事のところどころに、補足説明として「税金・社会保障教育ちゃんねる」様のYouTube動画を引用させていただきました。

 

 

前提知識

本題に入る前に、前提知識を共有したい。
ひとつひとつの用語について説明しているとキリがないので省略するけど、社会人にとっては馴染みのある用語がほとんどだと思う。

 

会社員の税金の種類

所得税
・住民税

 

個人事業主の税金の種類

所得税
・住民税
・消費税
・個人事業税(事業税)

 

会社員の社会保険料の種類

・健康保険料
・厚生年金保険料(国民年金保険料も含む)
介護保険
雇用保険
労災保険料

 

個人事業主社会保険料の種類

国民健康保険
国民年金保険料
介護保険

 

所得税・住民税はどのように決まるのか?

課税所得が多いほど所得税・住民税が高くなる。

課税所得=収入-経費-控除

※会社員の場合、副業で発生した場合を除けば、基本的に経費は0円

 

控除に含まれるもの

・給与所得控除(会社員の場合)
青色申告特別控除(個人事業主の場合)
社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
など

※控除の種類について、詳しくは以下の動画を参照


www.youtube.com

 

社会保険料はどのように決まるのか?

会社員の場合、標準報酬月額標準賞与額の合計が多いほど社会保険料が高くなる。

標準報酬月額=4月~6月の給与の平均

標準賞与額=支給回数が年3回以下の賞与の合計

 

標準報酬月額の給与に含まれるもの

・基本給
・残業手当
・家族手当
・住宅手当
・役職手当
通勤手当
・支給回数が年4回以上の賞与

 

個人事業主の場合、昨年の所得が多いほど社会保険料が高くなる。

所得=収入-経費-青色申告特別控除

 

青色申告特別控除とは、一定の条件を満たした場合に認められる65万円の定額控除のこと。
課税所得の計算に含まれていた各種控除は、青色申告特別控除を除き、所得の計算には含まれないので注意。
つまり個人事業主の場合、社会保険料を抑えるには収入を減らす経費を増やすしか方法がない。


会社員の場合、社会保険料を抑えるには4月~6月の残業を控えれば良いことが分かる。

 

その他

会社員の場合、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は、会社と従業員がそれぞれ半分ずつ支払う(労使折半と呼ぶ)。
規模の大きい会社だと、会社が半分以上負担している場合もある。
個人事業主の場合は全額自己負担。
また、雇用保険は会社が半分以上負担、労災保険は全額会社負担。


ただし自己負担分のみ所得税・住民税を計算する際の社会保険料控除の対象になる(会社が負担した分は控除対象外ということ)。


本題

ここまでを前提知識として、会社員と個人事業主の税金と社会保険料を比較検討する。
論点(=影響が大きいもの)は大きく4つあると思っている。


論点1.給与所得控除 vs 青色申告特別控除+経費【所得税・住民税】

会社員の場合

課税所得を計算する際に、年間の給与収入から給与所得控除個人事業主の経費相当)が引かれる。
給与所得控除は給与収入に応じて55万~195万円の間で設定される。 ※2024/3月現在
給与収入400万円/年の場合、給与所得控除は124万円。 
※給与所得控除の計算について、詳しくは以下の動画を参照


www.youtube.com

 

個人事業主の場合

課税所得を計算する際に、年間収入から青色申告特別控除(65万円固定)と経費が引かれる。
経費とは、収入に直接関係のある経費のこと。
僕のように、フリーランスエンジニアとして働く場合だと主に次のようなものが経費として発生する。

・交通費
・書籍代
・会計ソフトなどのサブスク代
スマホ代の一部
・家賃や電気・水道代の一部(在宅勤務メインの場合)
・たまに発生するパソコンなどの備品代
など


なので、特に備品代などが発生しない場合、経費はせいぜい30万~50万円/年程度になる。
青色申告特別控除と合わせても、95万~115万円/年程度。
そしてこの経費は、会社員の給与所得控除と違い、収入が増えたからといって必ずしも増えるものではない

 

所感

僕のように会社員とほぼ同じような働き方をしている個人事業主の場合、経費があまり発生しないので、会社員の給与所得控除の方が得だ。
また、経費が増えるということはその分、手元に残るお金が少なくなるということ。
会社員の給与所得控除は増えても手取りが下がるわけではない。


一方、経費(+青色申告特別控除)が増えると、所得税と住民税、個人事業税、社会保険料と、ほとんどの税金が安くなる。


また、国が会社員の給与所得控除を見直す審議を行っていたりするので、今後、給与所得控除が下がる可能性もある。


とはいえ、現時点では会社員の方が恵まれている。

 

結論

会社員の方が得。


論点2.小規模企業共済等掛金控除【所得税・住民税】

会社員の場合

個人型確定拠出年金iDeCo)、企業型確定拠出型年金(企業型DC)の掛け金を全額、小規模企業共済等掛金控除として収入から控除できる。
月の掛金の上限は、iDeCoと企業型DCを併用した場合で、最大7万5千円/月(iDeCo:2万円、企業型DC:5万5千円) ※2024/3月現在

iDeCo(イデコ)と企業型DCの併用はできる? メリットとデメリットを解説 | ソニー生命保険 (sonylife.co.jp)

 

個人事業主の場合

個人型確定拠出年金iDeCo)、国民年金基金、小規模企業共済の掛け金を全額、収入から控除できる。
月の掛金の上限は、すべてを併用した場合で、最大13万8千円(iDeCo国民年金基金の合計:6万8千円、小規模企業共済:7万円) ※2024/3月現在

 

所感

小規模企業共済等掛金控除に関しては、個人事業主の方が得だ。
ただし経費同様、掛金分だけ手元に残るお金が少なくなるということでもある。

 

結論

個人事業主の方が得。


論点3.会社員には課税されない税金【消費税・個人事業税】

消費税

売り上げ1000万円以上もしくは適格請求書発行事業者(インボイス)に登録した場合に発生する税金。


個人事業主が法人と取引する場合、契約書で取り決めた報酬額に加えて、取引に対する消費税を受け取っている。
受け取った消費税から、経費が発生した際に支払った消費税を差し引いた残りを、消費税として税務署に収める必要がある。


ざっくり計算(簡易課税計算と呼ぶ)だと、フリーランスエンジニアの場合、収入を得る際に受け取った消費税の50%(これをみなし仕入と呼ぶ)を支払えば良いことになる。
みなし仕入率は事業内容によって異なる。
2024年3月時点で消費税率は10%なので、

消費税=(年間の総収入×10%)×(100%-みなし仕入率)

ということになる。
年間の総収入400万円の場合、消費税は20万円/年ということになり、無視できない額になってくる。

 

個人事業税

所得(=収入-経費-青色申告特別控除)が290万円を超えた場合に発生し、所得が大きいほど個人事業税も大きくなる。


ただし僕のように、準委任契約で実質、会社員と同じ働き方をしているフリーランスエンジニアの場合は、そもそも個人事業税の支払い対象にならない。
しかし、請負契約で働いているフリーランスエンジニアの場合は、個人事業税の支払い対象になる。


このように、個人事業税の税率や、そもそも支払い対象になるかどうかは、業種によって変わってくる
ちなみに複数の事業を併用している場合には、役所(都道府県庁)に届け出ている事業内容をもとに課税対象かどうかを判断されることになる。


所得400万円、個人事業税の税率を5%とした場合、

個人事業税=(所得-290万円)×税率

なので、5万5千円ということになる。
他の税金ほどではないが、所得が増えた場合には無視できない額になってくる。

 

所感

これは言うまでもなく会社員の方が得だ。
個人事業主の場合、消費税と個人事業税はどちらも租税公課として経費にできるので、そこが救い。

 

結論

会社員の方が得。


論点4.健康保険+厚生年金 vs 国民健康保険国民年金社会保険料

社会保険料の解説動画

これはちゃんと説明できるほど詳しくないので、動画を観てほしい。
動画では言及されていないが、動画中の健康保険と厚生年金は、労使折半後の自己負担額を表していると考えられる。


www.youtube.com

 

健康保険 vs 国民健康保険

収入や、独身か既婚かに関わらず、健康保険料よりも国民健康保険料の方が高い
特に結婚して所帯を持ち、扶養人数が増えるほどこの傾向が顕著に表れてくる。

 

厚生年金 vs 国民年金

扶養している配偶者がいない前提で比較すると、おおむね国民年金保険料よりも厚生年金保険料の方が高い
ただし国民年金と厚生年金には、老齢年金・障害年金・遺族年金といった将来や死亡などのリスクへの投資や保険といった意味合いもある。
つまり保険料を多く払えばその分、老後に受け取れる年金や、自分が病気や事故で障害を負ったり亡くなった場合に家族に支払われる年金の額が増えるので、多いから悪いとは必ずしも言えない(コスパに関しては議論の余地あり)。

 

所感

会社員の扶養家族全員の健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料が無料になる特権は、個人事業主に比べて圧倒的なアドバンテージがあると分かる。
ただし、将来に渡ってずっと無料である保証はない。


ちなみに子供がいる場合、子供が妻と夫どちらの(社会保険上の)扶養に入るかは原則、収入が多い方の扶養に入るとされている(自分たちで選べない)。
なので個人事業主の場合は自分より収入の多い会社員と結婚すれば、子供の健康保険料を無料にできる。


扶養うんぬんの話を抜きにしても、僕は次の理由から会社員の方が得だと考えている。

国民健康保険料を多く払うことにメリットがない
・厚生年金及び国民年金を、年金としての側面を除いた保険商品としてみた場合に、民間の同等商品(就業不能保険や生命保険など)に比べて圧倒的に優れている

 

結論

会社員の方が得。


おわりに

ざっくりではあるが会社員と個人事業主の税金と社会保険料を比較してみた。
同じ職業&収入で比較するなら、会社員の方が個人事業主より得、というのが僕の結論になる。

・給与所得控除という見えない恩恵(額がでかく、経費と違って手取りが減らない!!)
・厚生年金による、将来への投資(老齢年金)
・厚生年金による、もしものときの保険(障害年金、遺族年金)
労災保険雇用保険が実質無料!!

 

これらが付帯されていると考えると「まだ会社員で消耗してるの?」なんてとても言えない。

 

加えて会社員が副業をした場合、副業収入に対しては条件を満たせば社会保険料がかからない
この仕組みを個人事業主向けに応用したのが有名な、マイクロ法人と個人事業主の二刀流と呼ばれる税金と社会保険料の削減方法になる。
詳しくは最後に紹介する書籍を参照。

 

ここまで同じ職業&収入で比較するならという前提条件を設定していた。
実際には、同じ仕事に対して個人事業主の収入は、会社員の収入と比較して高く設定されている傾向がある。
独立に興味のある人は、個人事業主の収入増と、本記事で述べた会社員のアドバンテージを天秤にかけて、独立するかどうかを検討することを勧める。

 

ばいちむ


マイクロ法人と個人事業主の二刀流で税金と社会保険料を削減する、という考えを日本に広めた元祖。
僕とは異なり、会社員のデメリットを強く主張している傾向がある。
独立に興味がある人は、こちらの本も併せて読んだ上で、ご自身でよく考えてみることを勧める。