ぽりたんたんblog

30代フリーランスの何気ない日常とエッセイ。

SIerがディスられがちなので、SIerの魅力について書いてみた

はてブをウォッチしてると、この手の記事をよく見かける。

note.com


エンジニアにとってSIerで働くことが如何にクソか、ということが共通して書かれている。

SIerというのは、システムインテグレータ―の略称(エスアイヤーと読む)。
システム開発の業務委託(アウトソーシング)を請け負う会社のことを指す。

僕がこういう記事を見ていつも思うのは、

エンジニアとしてスペシャリストを目指したいなら、その通りだね

ということ。

一方で上のような記事を書く人って、SIerが何なのか、その本質が分かってない。
ってことで、会社員時代に2社のSIerで働いていたぽりたんたんが、SIerについてざっくばらんに書いてみよう。

まぁ僕が働いてたのはIT業界ではなく「ものづくり業界」なのでIT業界とはちょっと違うかもしれないけど、本質的なところは共通してると思う。

当ブログの方針に従って、なるべくエンジニアでなくても分かるように頑張ります!

 

目次

 

SIerが社員に求めるのは「フルスタックビジネスパーソン」

SIerで働く会社員のよくあるキャリアの流れは次の通りだ。

入社すると、まずエンジニアとしてプログラミングなどの現場業務に携わることになる。
スタート地点がエンジニアなので、これが誤解を生む原因になっているのだろう。

入社3~5年もすれば協力会社を含めたエンジニア数名~10名程度が関わるプロジェクトのマネジメントを任されるようになる(プロジェクトリーダー、PLなどとも呼ぶ)。
自身もエンジニアとしてプロジェクトに関わるのでプレイングマネージャである。
この辺りから、現場でプログラミング等の技術を磨きたいスペシャリスト志向の人は「思ってたのと違う!!」となる。

出世して係長になると複数のプロジェクト、数十人のエンジニアのマネジメントを任されるようになる(プロジェクトマネージャ、PMなどとも呼ぶ)。
協力会社を含め、エンジニアの採用活動なんかにも関わるようになる。

課長になると今度は急に営業を任され、新規顧客開拓とか、既存顧客やベンダーなどとの関係強化など、社外との交流が多くなる。

部長以上になれば経営にも関わっていく(これはどの会社も同じかもしれない)。

このように多くのSIerが社員に求めているのは、ひとことで言えば「フルスタックビジネスパーソン」である。
プロジェクトマネジメント、顧客折衝、採用活動、営業、これらができた上である程度の開発業務なら自分でもこなせる程度の技術力を持ち合わせた人材。
こういうのが、SIerが社員に求める理想像だと思っている。

エンジニアとしてスペシャリストを目指したいという志向があるのなら、職種のミスマッチだと言える。
しかし逆に「エンジニア」という職種にこだわりがなく、自分の力で稼げる「ビジネススキル」を身に付けたいと考えている人にはおすすめだ。
将来起業を考えている人、営業など畑違いの仕事をしてきた人が今までの経験を活かしつつ新しいことに挑戦するのにも向いていると思う。

ちなみにSIerで働いてきた人の次のキャリアステップは様々で、商流元のメーカーに転職する人、ITコンサル会社に転職する人などが多い印象。
また僕のように独立してフリーランスエンジニアになる人や、マネジメントスキルを活かして飲食店などを経営する人なんかもいる。
僕の元上司(課長)は取引先の外資系半導体ベンダーから営業兼マネージャとしてヘッドハンティングされていた(断ったみたいだけど)。

こんな感じで、SIerでキャリアを積んできた人のその後のキャリアは「エンジニア」という職種に固執さえしなければ間口が広い。

 

SIerはブラック企業なのか?

ところで「SIer=ブラック企業」という印象を持ってる人も多いと思うので、それについて少し書いておこう。
これは半分正しくて半分誤りである。
というのはSIerといっても大きく契約形態によって以下の2つに分類されるからだ。

  • 請負契約メインのSIer
    国内企業の場合「ニアショア」、海外企業の場合「オフショア」と呼ばれたりもする
  • 準委任契約メインのSIer

話は脱線するが、SES(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれるエンジニアの派遣会社は、SIerとは違う。
SIerの場合(請負契約、準委任契約どちらの場合も)顧客とエンジニアの間には必ずプロジェクトリーダーが存在する。
そのプロジェクトリーダーが複数のエンジニアをマネジメントするのだが、SESのような派遣会社にはその機能がない。
フリーランスエンジニアもSESに属していて、いちエンジニアとして「自律的に判断して」開発業務を進める役割を担うだけだ。

話を戻す。
上記2つのSIerのうち一般的にブラック企業が多いのは「請負契約メインのSIer」だ。
理由は「請負契約」の次のような特徴にある。

  • 納期があること
  • 納品物に対して責任が発生すること
    納品物が顧客の要求仕様を満たしていない場合、修正責任が発生する
  • 納品するまで報酬が支払われないこと
    契約書に定められた「納品物の定義」次第で調整可能

「納期」と「納品物に対する責任」のどちらかが満たされなかったプロジェクトを「炎上案件」などと呼び、これが過重労働の原因であり、ブラック企業の代名詞にもなっている。
ストレスも多くなるので、職場ではパワハラがあったり、ひと昔前なんかは自殺者なんかもでたりしたようだ(これは会社の社風にもよるけど)。

一方で、準委任契約メインのSIerには「納期」も「納品物に対する責任」も発生しないため、必然的にホワイト企業が多くなる。
「準委任契約」の場合、顧客に対して遵守しなければならないと法的に定められているのは「労働力」、つまり実質「契約書で定められた月の労働時間」だけである。
ただし、準委任契約メインのSIerが請負契約メインのSIerを顧客としてそのプロジェクトの傘下に入る場合があり、その場合に「炎上案件」に巻き込まれることがある。

請負契約メインのSIerはブラックな職場が多いと書いたが、その分、身に着くビジネススキルは請負契約メインのSIerの方が多い。
「納期」と「納品物に対する責任」がある分、より厳格なプロジェクトマネジメント能力とリスク管理能力が求められるからだ。
また、見積もり作成とそれに伴う顧客折衝があるのも請負契約ならではの醍醐味の一つだと思う。

なので結局のところ会社の良し悪しは、自分が会社に何を求めるか、自分がどうなりたいか、次第である。

僕はというと、新卒で入社した1社目と転職後の2社目、どちらも請負契約メインのSIerで働いていた。
新卒いじめ、パワハラなどいろいろ経験してきたが(どちらも「される側」。〇ねばいいのに!!)、一番印象に残っているのは新卒で入社した会社のとあるプロジェクトが炎上して会社が倒産したことだろうか。

「納品物に対する責任」が果たせなかった場合に修正責任が発生すると書いたが、その場合にかかる工数には報酬が支払われないため、これが原因で会社が倒産した(僕は関わらずに済んだけど)。
大手のグループ会社だったので、親会社の資金力で救ってもらえたけど、社員の1/3くらいはリストラされてたと記憶している。
このように請負契約メインのSIerは倒産のリスクが高いことも付け加えておく。

余談だが、最近は世の中的にソフトウェアの開発手法が「ウォーターフォール開発」と呼ばれる請負契約に適した手法から、「アジャイル開発」と呼ばれる準委任契約に適した手法に変わってきている。
そのため、純粋な「請負契約メインのSIer」というのは少なくなってきてるんじゃないかなと思うし、今後もっと少なくなると思う。

www.ipa.go.jp

 

おわりに

少し極端な書き方になってしまったかもしれない。
実際のところ、SIerが現場の技術力をどの程度重視するかは会社(あるいは案件)による。
しかしSIerの本質というか「本音」の部分だけ抽出するとこんなところだろう。

今流行の動画編集で例えるならば、いち動画編集者として働くより、動画編集者を束ねるディレクターとして働いた方が稼げるのと同じ。
このときディレクターに必要な能力というのが、SIerが社員に求めている能力だと思えばいい。

なので、SIerでキャリアを積んできた人なら動画編集のディレクター業務もできると思う。
そういうポータブルスキルが身に着くのがSIerの魅力なのだ。

SIerというと、Web系企業のエンジニアからは

 

 

SIerはレガシーだ!!

 

 

とバカにされ、
商流元のメーカーやITコンサルの人からは

 

 

SIerは言われたことしかできない!!

 

 

とバカにされがち。
これ、ピンとこない人は転職活動してみれば分かるよ(日本はこういう偏見で溢れている)。
本記事がきっかけで、SIerの魅力にも目を向ける人が増えると嬉しいなと思う。

ばいちむ

 

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